「なかなか寝つけない」「すぐに目が覚めてしまう」不眠・睡眠障害について

不眠症って何?

不眠症とは、入眠障害や中途覚醒、早朝覚醒や熟睡障害などの睡眠障害が1カ月以上にわたって続き、次のような不調や症状が日中に現れる病気です。

●倦怠感
●集中力の低下
●記憶力の低下
●注意力の低下
●判断力の低下
●日中の強い眠気
●仕事や運転のミスが増える
●身体的症状(頭痛・胃痛・体の緊張など)
●食欲低下

誰しも心配事があるときや楽しみにしていた旅行の前夜など、「眠ろうとしても眠れない」という経験があると思いますが、通常は数日から数週間のうちにまた眠れるようになることがほとんどです。

しかし、眠りたくても眠れないという状態がしばしば(週2回以上)みられ、それが1カ月以上続き、睡眠が十分とれないことで様々な心身の不調が現れるようなら、「不眠症」の状態になっている可能性があります。

日本では不眠症になる人の割合が5人に1人と言われています。

不眠症の原因はストレスや心身の病気、薬の副作用などさまざまなため、その原因に応じた対処や治療が必要です。

不眠の症状A・B・C・D
あなたはどのタイプ?

不眠の症状は上にあげた4種類あり、不眠症では1つの種類が現れる他、同時に複数の症状が現れる場合があります。

A:入眠障害 

入眠障害とは、いわゆる「寝つきが悪い」という症状です。

眠ろうと思って布団に入っても、30分から場合によっては1時間以上眠れない状態が続き、なかなか眠れない不眠タイプです

不眠症の中では最も多いタイプで、ストレスや心配事があるときになりやすいと言われていますただしいったん眠ってしまうと、朝まで眠れる人も多いのがこのタイプです。

B:熟眠障害

熟眠障害とは、睡眠時間は決して短くないのに目覚めたときに「よく眠れた」という熟睡感がない症状です。

神経質な人や高齢者の不眠に多いタイプで、眠りが浅い場合や睡眠が中断されるのが主な原因です。

C:早朝覚醒

通常の起床時間や希望する起床時間よりも2時間以上前に目が覚め、それ以降眠れなくなる症状があるのが、早朝覚醒です。

午前3時~4時頃に目が覚めてしまい「まだ早いから眠ろう」と思っても、それ以降は眠れなくなります。
うつ病の方や高齢者によくみられるタイプです。

D:中途覚醒

中途覚醒とは、一度眠りについても起床するまでの間に何度も目が覚めてしまう症状です。

目が覚めてもまたすぐに眠れればいいのですが、再び寝付くのに時間がかかるケース多く、熟睡感が得られにくいのが特徴。
高齢者でよく見られる他、夜間頻尿といった消化器系の病気が原因のこともあります。

睡眠障害・不眠症の原因

睡眠障害や不眠症になる原因は人それぞれで、その原因を知らない限り適切な対処法は取れません。
不眠症を改善したいと思ったら、まずは自分の不眠の原因を突き止めることから始めましょう。

生理的な要因(加齢)

加齢など生理的な要因で不眠になる方が多くいます。

高齢になると身体能力の低下や睡眠と覚醒リズムのメリハリが少なくなることで、睡眠時間が少なくなったり、睡眠の質が落ちることがあります。
早朝覚醒や中途覚醒が主な症状ですが、加齢に伴う睡眠障害は生理的に自然なことで、特に病気という訳ではありません。

ただしうつ病や泌尿器の病気、その他高齢者でよくみられる病気が原因のこともあるので、心配な場合は医療機関に相談してみましょう。

心理的な要因

何か心配事や悩み、緊張を伴う出来事やイライラなど心理的な要因で不眠になる人もいます。
「眠ろうとすると考え事が止まらなくなり、いつまでたっても眠れない」という場合です。

とくに生真面目な人や神経質な人が陥りやすく、この状態が長く続くと不眠が慢性化してしまうことも。

また逆に恋愛や結婚、楽しいイベントの前など、ウキウキした心理状態のときにも不眠の症状が現れる場合があります。

薬理学的な要因(精神疾患や薬の副作用)

様々な病気の治療薬の服用によって、不眠が起こることがあります。
不眠になる可能性のある薬には、次のような種類があります。

●降圧剤
●甲状腺製剤
●抗がん剤
●うつ病の治療薬
●ステロイド剤
●インターフェロン
●パーキンソン病の治療薬

薬剤以外にも、コーヒーや緑茶などカフェインを含む飲料には眠気を覚ます効果があることはよく知られています。

またニコチンを含んだタバコにも覚醒作用があり、過度のアルコールも睡眠の質を低下させる原因となります。

身体的な要因(体内リズムの乱れや体調不良など)

体内リズムの乱れや体調不良が原因で、不眠症になるケースがあります。
例えば夜勤と日勤があるような、勤務時間帯が日常的に変化する職業の人などです。

人間の体には約24時間の体内時計が備わっていますが、日中の勤務と夜間の勤務の繰り返しで体内リズムが保てなくなると、「睡眠リズム障害」を起こし不眠の原因になります。

また風邪や腹痛、頭痛などの体調不良が原因で睡眠の質が落ち、不眠になる人もいます。
熱があって眠りが浅くなったり、悪夢を見たりする経験のある人も多いのではないでしょうか。
痛みやせき、息苦しさやかゆみ等の症状が続いていると寝付けなくなり、それが何日にもわたると不眠の原因となるのです。

精神医学的な要因(ストレス)

ストレスや緊張などで心に負担がかかり、睡眠障害を起こす場合があります。

うつ病や統合失調症、不安障害などの精神疾患が隠れていることも多く、これらの病気の治療をしなければ睡眠障害は改善しません。
とくにうつ病では「早朝覚醒」などの不眠や、逆に寝すぎる「過眠」が多く見られます。

また不安障害の方の場合は、「また今日も眠れなかったらどうしよう」というストレスで眠れなくなることもあります。
統合失調症では陽性症状として現れる幻聴や被害妄想が原因で、寝つきが悪くなったり途中で目が覚めて眠れないという症状が現れます。

このような精神疾患では、逆に寝すぎる「過眠」の症状が現れることもあります。

物理的な原因(環境の変化や時差、寝る前のスマホ)

環境の変化や寝室の状態、時差や寝る前のスマホといった物理的な原因でも、不眠が引き起こされる可能性があります。

引っ越し転勤で寝る部屋が変わった、寝室の光や騒音が気になって眠れないなどです。
また布団や枕を変えただけでも、眠れなくなることがあります。

日常的に時差がある国に行き来することが多い人は、時差ぼけで体内リズムが乱れて不眠を引き起こす可能性があります。

さらに寝る前にスマホを見るのが日課になっていると、いつまでも脳の興奮が収まらずに寝付けず、睡眠障害の原因になることも。

睡眠時間は問題ではない

睡眠障害になる原因は人それぞれですが、睡眠時間の長さや短さはそれほど問題ではありません。
というのも睡眠時間には個人差があり、適した睡眠時間は人それぞれだからです。

日本人の睡眠時間は平均7時間前後ですが、2~3時間の睡眠で問題なく生活できている人もいれば、10時間眠らないと寝たりないと感じる人もいます。
また加齢などで中途覚醒や早朝覚醒が増えるのは、ある意味自然現象で、日中の昼寝などで補填できれば問題ありません。

上で説明した通り、不眠症は「眠れないこと」の他に、「日中に心身に不調が出ること」が問題になります。
熟睡した感じがなくても日常生活に支障をきたさなければ不眠症とは診断されないのです。

睡眠障害の影響

睡眠障害は心身の病気が原因になっていることも多いため、元々の病気を治療しないと睡眠障害が改善しません。
また思春期の子どもや高齢者など年齢による睡眠障害は、それぞれに対処方法が変わってきます。

うつ病と睡眠障害の関係

うつ病と睡眠障害には密接な関係があり、うつ病と診断された方の8割以上が何らかの睡眠障害を抱えているというデータがあります。

うつ病の原因は「ストレス」と言われることがよくありますが、それ以外にもその人の性格や遺伝、年齢による役割の変化などが複雑に関与しています。
それらの原因により、脳内の神経伝達物質の機能が低下、情報の伝達がうまくいかなくなりうつ病が発症します。

こうした神経伝達物質「セロトニン」の機能低下や、睡眠リズムを司るホルモン「メラトニン」の分泌が減少したことで不眠になると考えられています。
ただの不眠症だったと思っていたら、うつ病だったという方も多くいます。

とくに早朝覚醒と同時に、朝は元気がなく夕方にかけて元気が出てくる「日内変動」が見られた場合はうつ病の可能性があります。早めに専門の医療機関へ受診しましょう。

またうつ病の治療をしたものの不眠などの症状が残ってしまった場合は、再発するリスクが5倍になると言われています。
そうでなくても不眠が1年以上続くとうつ病になる可能性が40倍高くなるというデータや、不眠の人は3年以内にうつ病になる可能性が4倍高くなるというデータがあるほど。

うつ病が先か睡眠障害が先かは人によるのですが、うつ病と睡眠障害には深い関係があるので注意したいところです。

<参考>精神疾患にみられる不眠と過眠への対応・日本心身医学会総会【睡眠障害の社会生活に及ぼす影響】

睡眠と関係のあるその他の病気

睡眠障害を引き起こすのは、うつ病などの精神疾患の他にもあります。
例えば次のような病気があると、不眠になりやすいと言われています。

●高血圧や心臓病(息苦しさ・動悸)
●呼吸器疾患(発作・席)
●腎臓病や前立腺肥大(夜間頻尿)
●糖尿病やリウマチ(痛み)
●アレルギー疾患(かゆみ・くしゃみ)
●脳出血や脳梗塞(頭痛)

病気とまでは至らなくても、肥満やメタボリックシンドロームなどでは、交感神経の興奮による不眠や睡眠時無呼吸症候群による睡眠障害が現れやすくなっています。

これらの病気は命に係わることも多いため、まずは病気の治療を最優先にすることをおすすめします。

学生が抱える睡眠問題

学生が睡眠障害で勉強や日々の生活に支障をきたす例もあります。
10代の子どもにとって、十分な睡眠は成長ホルモンの分泌や免疫力の増強などに欠かせません。

しかしスマホの使い過ぎや思春期に伴う心身の変化、塾や部活など多忙なスケジュールによって睡眠の問題を抱えている子どもが少なくないのです。
とくに子どもの年齢が上がるにつれて、睡眠時間が短くなりがちで、起床時間が遅くなる傾向です。

睡眠不足や睡眠のリズムが乱れている子どもは、朝起きられずに学校に行けなかったり、日中の眠気で授業に身が入らなかったりします。
また子どもの睡眠障害は、体調不良や情緒不安定の原因にもなるため、親がしっかり管理する必要があるでしょう。

高齢者の不眠

年齢とともに睡眠も変化するもので、若いころは何時間でも眠れた人でも高齢になると睡眠が短くなったり、早朝に目が覚めてしまったりします。
これは体内時計が加齢により変化するためで、それ自体は病気という訳ではありません。

日中眠くなったら昼寝をしたり、夜早めに眠ったりして睡眠時間を確保しましょう。
早朝目が覚めて眠れないようなら、思い切って起きだして、朝の時間を有意義に使うのもおすすめです。

現役時代と違って体を動かすことが少なくなって、日常にメリハリがないのも睡眠障害の原因になります。
そのような場合は、できる範囲で散歩などの運動を取り入れたり、人と積極的にかかわる趣味を見つけるのも有効。

ただし高齢者の不眠には、高齢者に多い病気が隠れていることがあります。

●認知症
●老人性うつ
●アルコール依存症
●睡眠時無呼吸症候群
●レストレスレッグス症候群
●周期性四肢運動障害
●レム睡眠行動障害

このような病気の可能性のある方は、医療機関での検査や診断、治療が必要です。

睡眠の質を高めるために自分でできる不眠の対処法

睡眠の質を高めるために、まずは自分でできる対処法を試してみましょう。

理想の睡眠時間

まずは自分の理想的な睡眠時間を知る必要があります。
前述で説明した通り、理想の睡眠時間は人それぞれで異なります。
3時間程度の睡眠で元気に動ける人もいれば、9時間は寝ないと日中眠くてたまらないという人などさまざまです。

また睡眠時間は季節によっても変化します。
健康な人でも、年齢が上がるにつれて早朝覚醒や中途覚醒が増えてきます。

理想の睡眠時間は、起きている間の日常生活に支障が出ないのが条件です。
日中の眠気で困らない睡眠時間を知ることで、今の自分に適した睡眠時間が分かるようになります。

自分の睡眠の問題点を見つける

次に自分の睡眠の問題点を見つけることが重要です。

睡眠障害の原因は病気や体内時計の乱れ、薬による副作用や睡眠環境など様々あり、それぞれの問題点に応じた対処が必要だからです。
病気が原因の不眠の場合は、病気の治療を進めると不眠が治る可能性もあります

また夜更かしやスマホの見過ぎで不眠傾向にある方は、生活のリズムを整える必要があるでしょう。
睡眠問題を解決するには、その問題を診断して取り除くことが必須です。

眠るための環境を整える

眠るための環境づくりも大切なポイントになります。
まずはベッドや枕、布団などの寝具は自分に合ったものを選びましょう。

また明るい光は刺激が強く脳と身体を覚醒させるため、テレビやスマホは睡眠前に見ないように気を付けてください。
寝室の照明を暗めに変えるのもおすすめです。

温度は20~25度に保ち、湿度は50~60%にするように心がけてください。

適度な運動をする

適度な運動や肉体的労働も、快眠には有効です。
運動は午前よりも午後の方がおすすめで、軽く汗ばむ程度の有酸素運動がいいでしょう。

継続するのがベストですが、毎日できなくても週に3回程度、30分~1時間程度の運動の習慣を身に着けるといいでしょう。

寝る直前の激しい運動は、逆に刺激になりすぎて寝つきを悪くする原因になります。
負担にならない程度の運動を長期間持続するのが、睡眠の質を高める秘訣です。

ストレス解消・リラックス

ストレス解消のためにリラックスできる時間を作るのも、睡眠の質を高めるコツです。
ストレスは睡眠障害の大きな原因となるためです。
普段から読書やスポーツなど、自分に合った趣味を見つけて、ストレスをためない生活を送るのが快眠のポイント。

また体をリラックス状態にするために、食事の時間を早めにしたりお風呂に入ったりするのもおすすめ。
食事は、なるべくベッドに入る4時間前までに済ませておくといいでしょう。
寝る1~2時間前までにはお風呂に入ってリラックスすると、快眠できやすくなります。

お風呂は40度くらいのぬるめのお湯に半身浴で30分ほどつかると、副交感神経が有利になり深部体温が下がって、眠りにむけて体の準備が整ってきます。

なかなか治らない場合は専門医に相談

自分でできる不眠の対処法を試しても、なかなか改善しない場合は、専門家に相談することをおすすめします。
不眠は短期間のものなら自分で対処できますが、長引いている場合は専門家による診断や治療が必要になるからです。

不眠症は精神科や心療内科で扱っていますが、いきなり精神科に行くのは…という方は、かかりつけの医師に相談するといいでしょう。

病院で相談するだけでも不眠の恐怖は和らぎます。
相談し適切な治療をすることで、睡眠障害が改善できる可能性が高まります。

眠れないことを心配したり考えてしまうと、不眠を悪化させる原因になるだけでなく、心や身体に様々な悪影響を与えます。
重要なのは「眠れないことを一人で悩まない」こと。
睡眠について不安や不満がある場合は、躊躇せず専門医に相談しましょう。

睡眠薬による不眠症治療

医療機関に不眠を相談すると、睡眠薬(睡眠導入剤)による治療を勧められる場合があります。
中には「一度睡眠薬を使うと手放せなくなるのでは?」と不安に感じる人がいるかもしれませんが、最近の睡眠薬は安心して使えるものが増えてきたのでご安心ください。

かつての睡眠薬は効果が高い一方で副作用が強く出る、依存性が高いなど安全性に問題がありました。
しかし現在使われている睡眠薬は、依存性が低くなり副作用も少ないものがほとんどで、徐々に意識が遠のくなど自然に近い眠りへと導いてくれるでしょう。

4つの不眠タイプ(長短時間型・短時間型・中間型・長時間型)によって使う薬の種類を変え、脳の興奮を抑える薬、睡眠・覚醒のリズムを整える薬・脳の活動を鎮める薬などの中から、最も適した薬が処方されます。

ただしこれらの睡眠薬は、医師の指導のもとで適切に使う必要があります。
自己判断で薬を止めたり、眠れないからと勝手に多く飲んだりするのは厳禁です。
いつまでも不眠が治らずに漫然と長期で使う原因にもなるため、薬の量を変えたいときは必ず医師に相談してからにしましょう。

治療後の注意すべき11ヶ条

不眠の治療で眠りの問題が解決した後も、規則正しい生活や良質な睡眠をとるための努力は続けましょう。

1.起床時間をなるべく一定に保つ
2.目が覚めたら朝日を浴びる
3.休日だからといって遅くまで寝すぎない
4.長時間昼寝しない
5.気分転換でストレス解消
6.就寝前はテレビ・PC・スマホの使用を控える
7.バランスのとれた食事を1日3回取る
8.タバコやお酒は控えめに
9.午後に有酸素運動する習慣をつける
10.寝る2時間前までにぬるめのお湯につかる
11.寝室の音・光・温度・湿度を快適に保つ

睡眠時間にはあまりこだわらず、眠れない日があっても気にし過ぎるのはよくありません。
とはいえ眠れない日が週2日以上あり、それが1カ月続くようなら、専門の医療機関を受診することをおすすめします。