睡眠周期
睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠という二つの状態が交互に繰り返されるサイクルで構成されています。
レム睡眠は夢を見やすい浅い眠りで、ノンレム睡眠は深い眠りです。
この睡眠サイクルが乱れると、不眠や日中の眠気といった不調につながることがあります。
不眠症の薬物治療と治療の流れ
検査・診断
医師は、睡眠に関する問診や睡眠日誌の記入、場合によっては睡眠ポリグラフ検査などを実施し、不眠の原因を特定します。
日常生活を見直しと生活習慣を改善
不眠の原因となる生活習慣の改善が最も重要です。
規則正しい睡眠リズムを作ること、カフェインやアルコールの摂取を控えること、適度な運動をすることなどが挙げられます。
症状に合わせて薬の処方
生活習慣の改善だけでは不眠が改善しない場合、睡眠薬が処方されます。
睡眠薬には様々な種類があり、症状や体質に合わせて最適な薬が選択されます。
生活習慣が是正され、 症状が改善したら薬の量を調整
睡眠薬は、症状が改善したら徐々に減量し、最終的には服用をやめることを目標とします。
不眠症治療薬の種類・メリットとデメリット
GABA受容体作動薬
メリット | 入眠作用が強く、短時間で眠りにつける。 |
デメリット | 依存性や日中の眠気、ふらつき感などの副作用が出やすい。 |
メラトニン受容体作動薬
メリット | 自然な睡眠を誘導し、依存性も低い。 |
デメリット | 効果が現れるまで時間がかかる場合がある。 |
オレキシン受容体拮抗薬
メリット | 中途覚醒や早朝覚醒に効果がある。 |
デメリット | めまい、吐き気などの副作用が出ることがある。 |
マイスリー(ゾルピデム)・ハルシオン(トリアゾラム)・ルネスタ
これらは代表的な睡眠薬で、それぞれ特徴が異なります。医師の指示に従って服用することが大切です。
催眠作用のある抗不安薬・抗精神病薬・抗うつ薬
これらの薬は、不眠の根本的な原因となっている精神的な問題に対して効果を発揮する場合があります。
不眠症状に応じた 睡眠薬の選択
入眠障害 | 寝つきが悪い場合 |
中途覚醒・早朝覚醒 | 夜中に何度も目が覚めてしまう場合、早朝に目が覚めてしまい、その後寝つけない場合 |
熟眠障害 | 眠りが浅く、熟睡できない場合 |
睡眠薬の副作用
持ち越し効果: 翌日に眠気が残る
健忘: 服用後、記憶が曖昧になる
筋弛緩作用: 体がだるくなる
反跳性不眠: 睡眠薬をやめた後、不眠が悪化する
アルコールとの相互作用: アルコールとの併用は危険
睡眠薬服用時のポイント
妊娠時の睡眠薬の使用については、医師に相談せずに睡眠薬を服用しないことが大切です。
入院中に生じた不眠症状について
入院は、普段とは異なる環境やストレスによって、睡眠リズムが乱れ、不眠症状が出現することがあります。
精神疾患
うつ病 | 悲しみ、絶望感、意欲の低下などが睡眠を妨げることがあります。 |
不安障害 | 不安や緊張感が高まり、寝つきが悪くなったり、夜中に何度も目が覚めてしまったりすることがあります。 |
躁うつ病 | 躁状態では興奮して寝付けず、うつ状態では意欲の低下から睡眠時間が長くなることがあります。 |
呼吸器系の疾患
睡眠時無呼吸症候群 | 睡眠中に呼吸が何度も止まり、何度も目が覚めてしまうため、熟睡できません。 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD) | 息苦しさや咳が夜間の睡眠を妨げることがあります。 |
入院中の不眠の原因と対策
- 環境の変化
病室の明るさ、騒音、室温などが睡眠に影響を与えることがあります。看護師に相談し、環境改善を依頼しましょう。 - 治療に伴う不快感
治療に伴う痛みや副作用が睡眠を妨げることもあります。医師や看護師に相談し、疼痛管理や副作用対策を検討しましょう。 - 精神的な不安
入院に対する不安や孤独感などが睡眠を妨げることもあります。家族や友人との電話や面会、病院の相談窓口を利用するなど、精神的なサポートを受けることが大切です。 - 生活リズムの乱れ
入院中は、普段の生活リズムが乱れがちです。規則正しい生活リズムを取り戻せるよう、起床時間や食事時間を決めて生活することが重要です。 - 薬の副作用
一部の薬は、眠気を誘発したり、逆に不眠を悪化させたりすることがあります。医師や薬剤師に相談し、適切な薬の調整を行いましょう。
入院中の不眠が長引く場合
入院中の不眠が長引く場合は、医師や看護師に相談し、睡眠薬などの薬物療法や認知行動療法などの非薬物療法を検討しましょう。
退院後の睡眠
退院後も不眠が続く場合は、一度、受診して相談することをおすすめします。
睡眠専門医を受診することで、より専門的な治療を受けることができます。
薬に頼らない睡眠習慣の改善
睡眠薬に頼らず、自然な睡眠を取り戻すために、生活習慣を見直すことが大切です。
筋弛緩法
全身の筋肉を意識的に弛緩させることで、心身をリラックス状態へと導きます。
<具体的な方法>
●全身の力を抜き、床に横たわる。
●各部位の筋肉を順番に緊張させ、数秒後に弛緩させる。
●深呼吸を繰り返す。
●海辺の波の音を想像したり、心地よい場所を思い浮かべたりするイメージトレーニング。
入浴
温かいお風呂にゆっくりと浸かることで、体温を上げ、その後体温が下がる際に眠気を誘発する効果があります。
<ポイント>
1.寝る1~2時間前に、ぬるめのお風呂(38~40℃)に15~20分程度浸かる。
2.入浴後、涼しい部屋で過ごす。
3.アロマオイルなどを利用して、リラックス効果を高める。
カフェインやアルコール摂取を控える
カフェインやアルコールは、中枢神経を興奮させ、睡眠を妨げる可能性があります。
<注意すべき食品・食べ物>
●コーヒー、紅茶、緑茶、コーラ、エネルギー飲料
●アルコール飲料
●チョコレート
●一部の医薬品
体内時計のリセット
体内時計をリセットすることで、睡眠と覚醒のリズムを整えます。
<具体的な方法>
1.朝は太陽の光を浴びる。
2.夜は暗い部屋で過ごす。
3.昼寝は30分以内にする。
不眠効果のツボ
ツボを刺激することで、リラックス効果を高め、睡眠の質を改善することができます。
<代表的なツボ>
●安眠: 三陰交、足三里
●不安解消: 心包経、神門
寝る前のスマホ
スマホのブルーライトは、睡眠ホルモンの分泌を抑制し、覚醒状態を維持させるため、寝る前のスマホの使用は避けるべきです。
昼寝
短時間の昼寝は、夜の睡眠の質を向上させる可能性があります。
ただし、長時間の昼寝は、夜間の睡眠を妨げる可能性があるため注意が必要です。
生活習慣の整え方
- 規則正しい睡眠: 毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる。
- 快適な睡眠環境: 寝室は静かで暗く、涼しい環境にする。
- 軽い運動: 昼間に適度な運動をすることで、夜の睡眠の質が向上する。
- 食事: 寝る前の食事は控えめにする。
- ストレス管理: ストレスを溜め込まないよう、リラックスできる時間を作る。
これらの方法を試しても改善が見られない場合は、医師に相談しましょう。
睡眠時間よりも睡眠の質が大切
「睡眠時間」と「睡眠の質」、どちらが大切なのでしょうか?
一般的には、睡眠時間は8時間とされていますが、個人差があり、必ずしも8時間睡眠が全員にとって最適とは限りません。
大切なのは、質の高い睡眠をとることです。
睡眠の質を高めることで得られる効果
- 疲労回復: 質の高い睡眠をとることで、日中の疲労がしっかりと回復し、活力がみなぎります。
- 集中力の向上: 睡眠不足は集中力の低下やミスにつながる可能性があります。質の高い睡眠をとることで、集中力が高まり、作業効率が向上します。
- 免疫力の向上: 質の高い睡眠は、免疫力を高め、病気にかかりにくい体を作ります。
- 精神的な安定: 質の高い睡眠は、ストレスを軽減し、精神的な安定をもたらします。
睡眠の質を高めるための具体的な方法
1)規則正しい生活
毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる。
2)快適な睡眠環境
寝室は静かで暗く、涼しい環境にする。
3)リラックスできる習慣
寝る前に温かいお風呂に入ったり、アロマセラピーを取り入れたり、読書をしたりする。
4)カフェインやアルコールの摂取制限
寝る前のカフェインやアルコールの摂取は避ける。
5)スマホやパソコンの使用制限
寝る前のスマホやパソコンの使用は、脳を興奮させてしまい、睡眠を妨げる可能性がある。
6)適度な運動
昼間に適度な運動をすることで、夜の睡眠の質が向上する。ただし、寝る直前の激しい運動は避ける。
7)ストレス管理
ストレスを溜め込まないよう、リラックスできる時間を作る。
8)食事
寝る前の食事は、消化不良を起こし、睡眠を妨げる可能性がある。軽い食事を心がけましょう。
睡眠の質を高めるためのその他
●睡眠日誌をつける
睡眠時間を記録することで、自分の睡眠パターンを把握し、改善点を見つけることができます。
●睡眠専門医に相談する
どうしても睡眠の悩みが解決できない場合は、睡眠専門医に相談しましょう。
まとめ
この記事では、不眠症の原因や改善方法について解説しました。
不眠症は、生活習慣の改善や治療によって、必ず改善します。
そして睡眠の質を高めることも、決して難しいことではありません。
まずは小さなことから始めてみましょう。
ご紹介した睡眠の質を高めるための様々な方法を試してみて、自分に合った方法を見つけていきましょう。
改善が見られない場合は、決して一人抱え込まず、専門家にご相談ください。
質の高い睡眠を取り戻し、心身ともに健康な毎日を送っていただきたいと思います。